こんにちは、ナビゲーターのKAZUYOです。
第1回の「
森永製菓のクリスマス」には、たくさんの声をどうもありがとうございます。ドキドキしていたのですが、楽しく読んでくださったようでホッとしました。
さて突然ですが、1月25日は何の日かご存じですか?
答えは「ホットケーキの日」です。第1回の次回予告をご覧になった方には簡単な質問でしたね!
1902(明治35)年1月25日に北海道の旭川気象台において日本の観測史上最低気温(-41.0℃)を記録したことから、とくに寒くなるこの時期においしいホットケーキを食べて心も体も温まって欲しいとの願いを込めて森永製菓が制定しました。そこで、今回はホットケーキについて紹介したいと思います。
■日本のホットケーキの始まり
日本のホットケーキの歴史ですが、日本プレミックス協会によると、 1884(明治17)年に出版された百科全書(文部省翻訳)にパンケーキの作り方が紹介されたことが始まりです。
そして、河出書房新社『明治大正家庭史年表』※によると、関東大震災が発生した1923(大正12)年、ホットケーキが「ハットケーキ」の名でデパートの食堂などで供されたそうです。また、東京市内のそば屋など土間式・椅子・テーブルを採用し、献立表にカレーライス、カツ丼、すきやきなどが並ぶようになったとあります。1923年2月20日に、丸の内ビルディング(丸ビル)が完成し、森永キャンデーストア(売店・レストラン併設)が開業しています。
▲1938(昭和13)年の森永キャンデーストアのメニュー。ホットケーキも。
■森永ホットケーキミックスの誕生
1931(昭和6)年に、日本で初めて無糖のホットケーキミックスが発売されましたが、あまり浸透しませんでした。本格的に生産されるようになったのは、1950年代です。森永製菓は「マーケティング」に力を入れており、戦後の食生活の急激な洋風化と、即席調理食品の流行の兆しを掴み、対応した食品の開発を進めていました。
そういった背景の中、レストランで食べるホットケーキを、家庭でも手軽においしく作ることができたら喜ばれるのではと考えました。全ての家庭に冷蔵庫が無かった時代ということもあり、商品は、水だけで作れるように工夫しました。
こうして、1957(昭和32)年に加糖のホットケーキミックス「ホットケーキの素」を発売したところ大人気に。さまざまなメーカーからもホットケーキミックスが発売され、一般の家庭にも急速に普及しはじめたのです。
▲1957(昭和32)年 森永ホットケーキの素 砂糖・卵白粉入 <チューブ入りメープルシロップ付>発売 450g 180円(税抜)1箱で10枚分。パッケージには、ワッフルや蒸しパンなどのアレンジレシピも掲載。チューブ入りのメープルシロップも入っています。
▲コンビーフやコンソメ、紅茶、トマトジュースなどと詰め合わせてギフトにも。
「ホットケーキの素」発売の時の社内報には、次のように紹介されています。
■1959年にはメープルシロップ無し&インスタントマーク付きに
1959(昭和34)年には、チューブ入りのメープルシロップを無しにして、価格を下げました。また「インスタントマーク」をつけて、手軽に家庭で調理でき、料理時間の節約もできるという生活提案をしました。発売の時の社内報には、次のように紹介されています。
左▲1959(昭和34)年 森永ホットケーキミックス 卵粉・粉末バター・砂糖入り <メープルシロップ付> 450g 100円(税抜)
中央▲インスタントマークは、「包丁やまな板のいらない暮し・・・食生活の合理化を目指す『森永』が、即席食品のシンボルとして快適な暮しを約束するマーク」と説明されています。
右▲1963(昭和38)年には、粉末メープルシロップ付に変更。粉末メープルシロップをポリ袋に詰め、ホットケーキミックスと一緒に箱に詰め合わせていました。メープルシロップは、お湯に溶かして作ります。
1963年の社内報には、発売時から10倍以上も売り上げが伸びたこと、ホットケーキミックスのトップブランドだと記載されています。その後、長い歴史の中で、パッケージや品質を磨き続けてきました。
「インスタント」を始めたのは森永製菓、最初のマークはホットケーキミックスに
1960(昭和35)年、森永製菓が、日本で最初に国産「インスタントコーヒー」を発売したことをきっかけに「インスタント」という言葉が流行しました。当時、欧米では「インスタントコーヒー」のことはソリュブルコーヒーの名で呼ばれていました。製品を発売するにあたって、日本で親しまれる呼び名を検討した時に、「クイック」とか「即席」といった案も議論されましたが、「インスタントコーヒー」という英語名を使用することにしました。そして、馴染みのない「インスタント」という言葉を普及させるため、「インスタントコーヒー」の発売前年から「インスタントマーク」をつくり、少し手を加えるだけで食べられる商品のパッケージにつけました。そして、最初にインスタントマークがつけられたのが「ホットケーキミックス」なのです。その後、「コンソメスープ」、「インスタントポテトマッシュ」、「インスタントカレー」「インスタントかつおぶし」等にもつけています。
▲インスタントコーヒーの新聞広告
▲1962(昭和37)年頃のパンフレット
▲インスタントマークが付けられた商品たち
■ホットケーキのパッケージデザインに着目!
左上から1957年、1962年、1963年、1971年、左下から1978年、2000年、2008年、2015年です。1971年から赤の台形のデザインで、1986年の森永製菓のエンゼルマーク変更に合わせて「森永」から「エンゼルマーク」になりました。
パッケージのホットケーキの厚さは、水だけで作っていた頃は薄く、1978年からは卵と牛乳を入れているので、ふっくらと厚くなっています。
■ミレニアム記念パッケージ
2000年には、ミレニアム記念で「20世紀ホットケーキミックス」を期間限定で発売しました。
1977(昭和52)年に発売された菓子ミックスのパッケージをリメイク。裏には、<21世紀も家族みんなのおいしさ広がれ>というメッセージとともに、表面と同じシーンの21世紀予想図を掲載しています。現在と比べていかがでしょうか?
1977年の「クッキーミックス」と「20世紀ホットケーキミックス」、そして21世紀未来予想図。21世紀も変わらぬおいしさを提供したい、家族みんなで楽しんでいただきたいという想いが伝わります。
みなさん、ホットケーキにはどんな思い出がありますか?
親子で作ったこと?バレンタインデー?サーサ、みんなでホットケーキ~♪の「ホットケーキの歌」を思い出される方もいるかもしれませんね。森永ホットケーキの素を発売した時の社内報にあるように、今までもこれからも、ホットケーキが、みなさんの生活を一層たのしく豊かにしてくれることを願います。
次回は、「ビスケット」を紹介します。お楽しみに!
※参考文献
下川 耿史 監修、家庭総合研究会 編『明治大正家庭史年表』河出書房新社(2000)
日本プレミックス協会
http://www.premix.org/wonderful/history.html