はじめまして、KAZUYOです。歴史に関わる広報活動や業務の支援、歴史資料の保存管理、森永エンゼルミュージアム MORIUMの展示などを担当しています(学芸員の資格を持っています)。といいましても、森永製菓の歴史は奥深く、まだまだ勉強の毎日です。
森永製菓は西洋菓子を日本に広めたパイオニアです。1899年の創業時からの商品や広告、写真など数万点を、菓子産業発展の歴史や生活文化史を伝える貴重な資料だと考え、大切に保管しています。とても素敵だったり、面白かったり、様々な資料があるのですが、なかなか皆さんにご紹介する機会もなく残念に思っていました。
そこで、今月から毎月、森永製菓の歴史資料をもとに、みなさんへ歴史にまつわるいろんな情報をお届けしていきます!
では、早速今月のトピックスです。
どのような内容が、楽しんでいただけるのか悩んだのですが、12月ということで、「森永製菓のクリスマス」の始まりの頃を辿ってみたいと思います。
では、歴史の玉手箱、スタートします!
▲資料の保管庫
■森永製菓の広告に「クリスマス」が登場したのは1904年
森永製菓に残る新聞広告に、クリスマスの文字が初めて登場するのは、創業5年目の1904(明治37)年12月です。お菓子を贈る機会としてお歳暮、年始とともにクリスマスを紹介しています。1907(明治40)年の新聞広告には、サンタクロースが登場します。
日本のクリスマスのイルミネーションの先駆けと言われる、明治屋の銀座での「クリスマス飾り」が1900年(明治33)年なので、早い時期からクリスマスに着目していたことが分かります。この頃、西洋菓子は高価なもので、子どもが気軽に買えるような存在ではありませんでした。そのため、進物・贈答用にとPRしています。
▲左:1904(明治37)年新聞広告。クリスマスの文字が見えます。
右:1907(明治40)年新聞広告。サンタクロースの手には、西洋御菓子のお歳暮。
■クリスマスに販売していたものは?
大正から昭和にかけて、クリスマスセールが盛んになっていきました。全国に組織された森永製菓の菓子の販売店や森永キャンデーストア(売店・レストラン併設)では、クリスマスセールが行われました。昭和の記録を見ると、クリスマスツリーやサンタクロースが飾られ、クリスマスケーキや様々なお菓子、白いタイツのような靴下にお菓子を詰めた「ストッキング」を目玉商品として販売していました。当時の販売店向けに作成した森永製菓の情報誌には、店内のクリスマス装飾の方法などのアドバイスが掲載されています。
▲左上:1915(大正4)年の新聞広告
右上:1927(昭和2)年頃の森永キャンデーストア。髪型に時代を感じます。
左下:1927(昭和2)年頃の店頭のディスプレイ。
右下:1927(昭和2)年頃のクリスマスセールの様子。
大小の「ストッキング」や華やかに包装された菓子が並んでいます。
▲1928(昭和3)年のサンタクロースが描かれた進物用パンフレット。
パンフレットには、ビスケット「マリー」もあります。
▲左:1929(昭和4)年のクリスマスセールの新聞広告。店内にはクリスマスツリーを飾り、
お菓子のデコレーション・ストッキング・プレゼントなどを揃えていたとあります。
右:1935(昭和10)年の森永キャンデーストアのケーキのパンフレット。現在とはだいぶ違いますね。
■サンタクロースからのプレゼントはお菓子?!
昭和初期の森永製菓の広告を見ると、子どもたちにプレゼントを届けているサンタクロースの姿が描かれています。サンタクロースからのプレゼントにお菓子も活躍していたようです。
▲左:1932(昭和7)年の新聞広告。煙突とサンタクロース。
寒い夜でもサンタクロースが元気なのは、森永のお菓子を食べるからだそうです。
右:1935(昭和10)年の雑誌広告。サンタクロースからの美味しい贈り物は
ミルクチョコレートやミルクキャラメルです。
■クリスマスを広めるために、イベント「クリスマスの集ひ」開催
クリスマスを広めたい、子どもたちに楽しんでもらいたいと考え、1928(昭和3)年から「クリスマスの集ひ」を企画。第1回は、明治神宮外苑の日本青年館で開催され、音楽、映画、劇など盛り沢山の演目です。
プログラムを見ると、おとぎ劇「初めて見たサンタクロース」の内容は、『こどもたちはサンタクロースのお爺さんをからかおうとストーブのそばに花火を仕掛けて寝ました。そこに、泥棒が忍び込み、お爺さんを気絶させ、プレゼントを盗みます。ところが泥棒が帰り際に煙草の吸殻をストーブに捨てたところ、花火が鳴り出し、お爺さんや子どもたちが目を覚まして泥棒をつかまえた』という微笑ましい内容です。
当時映画の入場券が50銭の時代、「クリスマスの集い」は30銭(後に50銭)で、お菓子のお土産付きだったので大盛況でした。1937( 昭和12 )年開催予定だった第10回は、戦争の影響により中止となりましたが、大好評の企画だったため戦後に復活します。
▲左:1932(昭和7)年の「クリスマスの集い」新聞広告
右:1933(昭和8)年の新聞広告。子供たちの笑顔のために開催しています。
いかがでしたでしょうか?
クリスマスの贈り物として愛されてきた歴史を見ると、お菓子には心と心をつなぐ力があるとあらためて思いました。
皆さんはどのように思われたか教えていただけませんか?コメントで感想をお聞かせいただけると励みになります。どうぞよろしくお願いいたします。
メリークリスマス!お菓子と一緒に素敵なクリスマスをお過ごしください。
次回は、1月25日のホットケーキの日にちなんで「ホットケーキミックスの歴史」をご紹介します。
お楽しみに!