こんにちは、鈴木みくです。
今回は【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ③】鹿児島日帰り弾丸ツアーレポートの中で登場した研究者の方に教えていただいた「芋麹」を中心にご紹介します。
この出張は、2019年初夏に娘が1歳半のときに行った「さつまいもを巡る旅」。
「心ほっくりおやつ」は、この時に出会った地元の研究者の方、そしてそこからつながった農家の方、麹作りのプロの方、多くの方との出会いとご協力で完成しつつあるのです。
※『OUR TeRaSu』とは……クラウドファンディングプラットフォーム。運営は「テーブルを創るすべての人を幸せに」をテーマに事業活動を行う、株式会社SEE THE SUN。本プロジェクトは、100%以上達成。
前回のブログ(【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ④】イベント報告 パート2!)でご報告させていただいたように、オンラインイベントを開催し、共同開発者の皆さんと一緒に「心ほっくりおやつ」の商品開発をすすめています。
これは、焼き芋ペースト、さつまいも蜜、芋麹、焼き芋パウダーを使い、心と体がほっくりするおやつを完成させるというプロジェクト。
なぜさつまいもか……それは、授乳期に乳腺炎になってしまい、助産師さんから「おやつはさつまいもだけです」とアドバイスをされたことがきっかけでした。
その優しい味わいと甘さに心がほっくりし、そんなさつまいもを小さな娘と分け合って食べるおやつの時間によって、日常にはたくさんの小さな幸せがあることに気づくことができました。
そこで、自分と同じようなママや、毎日いろいろなことを頑張っているみなさんがほっくりできるような「さつまいもの素材感あふれる、でもスイーツ感もしっかりあるお菓子」をつくろうと決意。プロジェクトがスタートし、こうして皆さんの協力をいただきながら、商品が出来上がりつつあることにとてもワクワクしています。
今まで、私たち研究員は、社内の人と試食を重ねてお菓子を作ってきました。
今回、初めて開発段階から様々な人と一緒にお菓子を作っていること、とてもうれしく、楽しく感じています。いままで想像するしかなかったお客様の笑顔が、すぐそこに見えるようで、とても心強いのです。
先日のオンラインイベントでは、8種類の試作品を試食しました。
最大のこだわりポイントである「芋麹」のことについてもお話させていただきました。
今回、このブログでは私がどうしてもこだわった芋麹について紹介していきたいと思います。
まず、麹といえば、お米の麹(米麹)を思い浮かべると思います。
これは蒸したお米に麹菌を種付けし、育てたものです。
家庭でも米麹を使って甘酒や調味料の塩麹をつくったことがある人もいらっしゃるかと思います。
このプロジェクトを始めるまでは、私も米麹しか知らなかったのですが、調べると、芋麹、麦麹、豆麹などもあると知りました。
私が「心ほっくりおやつ」を作るときに大事にしていたことは大きくふたつ。
心からほっくりできるように、できるだけシンプルな原料で作ること。
それから、さつまいもの素材感をしっかりと保ちながら、スイーツならではの満足感もあるということです。
米麹を使っても味は充分美味しいのですが、このふたつが開発者としてどうしても譲れないポイントだったので、芋麹をこだわって使いたかったのです。
さて、ここで麹菌についてご説明したいと思います。
麹菌は、食品の発酵を促す微生物のひとつです。発酵食品を作るのにかかわる微生物は多々ありますが、麹菌はさまざまな酵素をつくりだすという特徴があります。
イベントの参加者の皆様も、「素材の甘味が引き出されて、しっかりと甘い」と驚かれていらっしゃいましたが、この酵素が「心ほっくりおやつ」のさつまいもの甘さを引き出すカギになっているのです。
麹菌をさつまいもに植え付けると、酵素を生み出しながら繁殖します。この酵素がさつまいものデンプンを分解して糖に変えます。この時間や麹菌の量を調整することで、甘さの調整をしていったのです。
反応時間を長く、添加量を多くすればいい、というものでもなく、麹菌が酵素をたくさん生み出す温度や湿度の条件、さらには酵素がよくはたらいてくれる温度条件なども関わってくる、とても奥深い経験でした。
この芋麹、実は芋焼酎の製造が盛んな九州地方の一部の醸造元さんで使われています。
多くの芋焼酎は米麹と蒸したさつまいもで作られていますが、芋麹を使った芋焼酎にこだわって製造されている醸造元さんが数軒いらっしゃると伺っています。
ただし、どこの醸造元さんにとっても大事な焼酎のための芋麹。
当然、門外不出だったり数量が限られていたりして、「少し分けてください」「はいどうぞ」というわけにはいかず、しばらくは私が研究所のシャーレの中で育て続ける数か月間でした。
もう、米麹を使うしかないのかな・・・という考えが頭をよぎりながらも、諦めきれずにいた頃。
とあるきっかけで醸造元さんではない、麹作りのプロの方々と出会うことができ、お話をすると共感していただいて、その日のうちに「いいよ、作ってあげるよ」とトントン拍子にお話が進んだのです。
あのときは、本当にうれしく、奇跡のような出会いでした。
この出会いがあったからこそ先日のイベントまでたどり着くことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
鹿児島県のさつまいも農家さん、芋麹を作ってくださった方々など、いろいろな方の想いと私の想いがつながって、そこに今度は共同開発者のみなさまの想いが重なり、完成に向かって進んでいるのが、「心ほっくりおやつ」なのです。
みなさまにお届けできる日が来ましたら、ぜひ、召し上がってくださいね!
余談ですが、麹菌についてもうひとネタ。麹菌が酵素を産生し、デンプンを糖に分解すると甘さが引き出されるというお話をさせていただきましたが、他にも、タンパク質を分解すると、うまみの元となるアミノ酸になります。
味噌や醤油にうまみがあるのは、麹菌が生み出す酵素が、大豆のタンパク質を分解しているからなのです。
麹菌が生み出す酵素を利用して、私たちは、日本酒、焼酎、味噌、酢、醤油、味噌などの発酵食品を作ってきました。日本食に欠かせない食材ばかりです。
日本を代表する国花は桜、国鳥はキジ、国蝶はオオムラサキ……そして、国菌は麹菌なのです。(2006年日本醸造学会大会で認定)
「心ほっくりおやつ」を食べると心がホッとするのは、私たちのルーツに深く関わる麹菌を使っているからかもしれません。
<シリーズ記事>
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ①】「心がほっくりするさつまいものおやつ」ができるまで
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ②】イベント報告!
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ③】「心ほっくりおやつ」ができるまで 鹿児島日帰り弾丸ツアーレポート
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ④】イベント報告 パート2!
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ⑥】さつまいも愛!
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ⑦】イベント報告 パート3!
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ⑧】お菓子を作る&届けるプロたちの神技!
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ⑨】たくさんの人にほっくりを届けたい!
【鈴木みくの今日もおやつ開発中 ⑩】最終回『日常芋飯事』完成!